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研究報告/構成の実験展

造形デザインにおいて構成されるものは、知覚表象だけではない。「ここでの」という限定をするまでもなく、われわれは既に「純粋造形」をもち得ない。「社会的」と限定するまでもなく身体がすでに社会性を帯びているように、である。だからデザインのスキルを奮う者は、そのジャンルが何であれ、受け手の身体感覚やコンテクストへの意識を明確化せずして、その成果を十全に社会化することができないということができる。
デザインのスキルをそのような前提をもつものとして再定義するときデザイナーは、対象が何であれ、そこに分け入る際に規定する諸々の「水準」や「次元」、さらには加工のための「素材」や「道具」、ひいては加工及び伝達上の「方法」を、いわゆる「ものつくり」以前を含む過程において、さらには展示をはじめとするコミュニケーションの環境づくりを通じて、多様に経験・整理・蓄積し、あらたな活動に向け備えねばならない。
つまりデザインとは身体活動とヘッドワーク、自と他の往来による実験や考察に基づく計略を必要とする、極めてシステマティックな概念カテゴリーであるといえる。
構成の実験展は、デザインを以上のような水準でとらえることを前提に、計略上のガイドラインとして共通「テーマ」を設定した上で、各参加者における現状の蓄積に、あらたな課題設定に基づく実験及びその成果を加えるようにしてスキルアップをはかるべく、企画された。
初回のテーマは、『Dimension's』。つまり『次元の』という意味である。2/2.5次元、音/視覚の次元といった知覚と身体的コンテクストとの接続にむけた実験、及び形/意味の次元、造形/場面の次元といった知覚と社会的コンテクストとの接続にむけた実験など、いずれも冒頭述べた前提のもとに、異なる次元の分析及び統合にむけて取り組んだ作品構成である。
第1回の参加者は、岡山県立大学大学院ビジュアルデザイン学専攻教員5名と院生2名からなる。
以下に本展の概要を紹介する。

| 会期 |
2004年12月3日―8日(12月5日ギャラリートーク実施) |
| 会場 |
アートスペースすろおが463 (岡山市) |
| 主催 |
Experiment On Design、アートスペースすろおが463 |
| テキスト |
吉原直彦 |
| 構成 |
東島真弓 |


L’ermitage des Plantes + Phenomena/吉原直彦 + 服部紗枝(院2年)
日本文化の特性として、松岡正剛がとりあげた「おもかげ」と「うつろい」に触発された2人によるグラフィックな草庵である。「おもかげ」とは心像、「うつろい」とは空間的には「おもかげ」を構成する2極をつなぐなんらかの「間」であると考えている。このような時空間性を、現実の構成に宿していくためには、時間軸上では作品体験に一定の時間を要し、かつ空間的には移動のためのスペースを必要とする。そこで与えられた狭く細長い空間に、日本文化における、おそらくは「うつろい」の下位のファクターと思われる、浸透する2極の「内と外」を利用し、境界部に草庵、つまり茶室に至る庭のイメージを配置することから着手した。最深部のグラフィックスもまた、「内と外」を浸透する日本的なイメージを与えられたものであり、いわば同種の空間性をもつ異種の表現が「入れ子構造」になった全体構成である。
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「L’ermitage des Plantes」(吉原直彦)
H2300×W5360mm、布インクジェットプリンメ、パイプ、照明器具 |
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「Phenomena」(服部紗枝)
H728×W515mm、パネル、シルクスクリーンプリント |

Air Pocket Project/東島 真弓
今回の実験展では、時間や空間とともにある場所のイメージに着目し、その様相と私たちの関係ーイメージの経験ーについて、作品を介して検証することを目的とした。私たちは作品を介してその場所をイメージしようとする。しかしイメージであるプリントの再現性(本物らしさ)や規則の共有化(原寸大や縮尺)ー構えーを用いても、場所の措定は困難であるようにみえた。なぜならそこは、経験の枠外にある無名の場所だからである。このことから「場所」のイメージは時間や空間と不可分な経験であり、そこにあるのではなく、そことして姿を現すことがわかる。
今回の作品は場所の特定のイメージを表現しているのではなく、そのような関係に対してぶれを産出する装置であった、といえよう。
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「Air Pocket Project」
インクジェット出力:5120×3330 mm |
リーフレット 160×110mm
(折り加工変形。100部) |

Wave Performer/八尾里絵子
この作品は「音」「視る」の融合を追求するシリーズ(4)である。この融合とはつまり、両者を等価に扱うことを指し、音を空間に描画する一手法の提示を目的としている。音は振動として空気中を流れ続け、「今」鳴っている音として空間に留まることが困難であることから、人は音を視てみたいと考える。そこで空間内の見えない「振動」に着目し、物音や気配、モノの動きなどによって影響しあう波の変化の可視化を、波形データ及びMIDIデータを用いて描画するプログラムで実現した。
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「Wave Performer」
作品はMIDI信号による音声可視化ソフトウェアをベースに、オーディオビジュアル・インスタレーションの形態でプログラムとその仕様の展示を行った。プログラムはMAX/MSP4.5+Jitterで組み、Apple PowerBoookG4へのMIDI入力はRoland JV-90、出力音源はQuickTime、波形映像はプロジェクタで投影し、これらによって[Wave Performer]を再生する環境が整う。 |

Spread "KANA"/野宮 謙吾
「文字組における視覚伝達と意味伝達の融合」―ひらがな敷き詰めによる図像抽出の実験―
文字は、意味(表意)・音声(表音)を伝達するための記号である。伝達するためには文字を「読む」行為が前提となるが、「読む」ためにはまず文字を「見る」行為が必要である。従って、文字を読むということは文字の形態からくる何らかの視覚イメージを同時に受け取っているはずである。文字は組みあわされることで文章となる。文章の種類は無限である。ということは、文章として組まれた文字群をひとかたまりの形態としてとらえた場合、その種類も同じく無限であるといえる。そして、その形態の中から何らかの意味を含んだ図像を抽出できる可能性がある。この図像が、文章の意味内容と合致するものであれば、文字の持つ視覚伝達と意味伝達という機能的両側面を、同時多重的に表現できるのではないかと考え、本実験を行った。
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「Spread "KANA"」
パネル、H728×W1030mm、5点、インクジェットプリント
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並進・回転・鏡映による2D−2.5Dパターン/西田麻希子
平面の正則分割の基本原則を使用した「並進・回転・鏡映による2次元パターンの制作」と、制作した2次元パターンを3次元に向かって展開した、切り起こし技法による「2.5次元パターン」の制作である。「2.5次元」という言葉は、切り起こし技法によって作られる立体を「2次元から3次元に抜け出す途中にある幻のような立体だから2.5次元と呼んでいます」という、クラフト作家・黒須和清氏の言葉より拝借した。

顔と異文化融合〜シミュレーション実験〜/宗近寛之(院1年)
顔はコミュニケーション手段として重要な要素のひとつといえる。しかし情報化された近年の日本では、旧来の意味での身体的な「顔」の役割が変化しており、「顔のない顔」が増加しているという側面も持っている。今回の実験では、人はこれからどのような顔を求めていくのか、「顔加工」と題して顔を再構築することを試みることにした。マリリン・モンローとマイケル・ジャクソンをモチーフにし、「崩れることのない美」と「形成されていく美」という二つの次元に着目して、これを融合させることによって、そこに生まれる新たな顔のシミュレーションを試みた。
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「マイケル・モンロー」 |
「マリリン・ジャクソン」 |
B0パネル(H1,456×W1,030mm) 2点、インクジェットプリント
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